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どこまでも玩具
第11章 立たされた境地

 携帯。

 鞄のチャック。
 電話。
 電話帳。
 指が上手く動かない。
 校門を出て、すぐに電話を掛けようとする。
 しかし、手が止まった。
 何を訊きたいんだ。
 雛谷の言葉が蘇る。
 西雅樹と俺は、同じ?
 同じなんですか。
 訊きたい。
 でも、訊きたくない。
 「くそっ……雛谷め」
 わざわざ言われたくないことを。
 タイミングが悪いんだ。
 本当に。
 なんで西雅樹が尋ねて来たとき、いたんだよ。
 知らなきゃ良かったのに。
 携帯を握り締め、駅に向かい歩く。
 頭を冷やそう。
 冷やしたら解決するかもしれない。
 段々足が違う方向に向かう。
 ヤバい。
 ダメだ。
 もう一度携帯を取り出す。
 頼む。
 繋がってくれ。
 もう、どっかに移されてるのかな。
 まだ家にいるんだろうか。
 信号で止まる。
 この先、一キロほどの場所に類沢の家はある。
 行って、どうする。
 自分が問いかけてくる。
 知るか。
 そんなもん。
 勇気が消えないうちに発信ボタンを押した。

 震える手でチャイムを鳴らす。
 足音が聞こえる。
 「随分早かったね」
 出勤着のままだ。
 じゃあ、裁判所からの通知は朝に来たんだろう。
 「近くにいたので」
 「瑞希の家と正反対の、この辺りに?」
 そうだ。
 何故か。
 靴を脱いでリビングに上がる。
 類沢を見ると安心した。
 つい灰皿に目がいく。
 十数本。
 いま、不機嫌じゃなければいいんだけど。
 緊張がこみ上げてくる。
 「類沢先生」
 「座って」
 素直に従う。
 テーブルを挟んで向かい合う。
 「西雅樹ですよね」
 恐る恐る。
 だけど、はっきりと。
 「裁判の相手は」
 「そうだね」
 穏やかな声。
 しかし、次の問いを抑圧する声。
 西雅樹と何があったんですか。
 多分、訊いてはいけない。
 類沢が固く隠している過去。
 俺は俯いて思考をめぐらせた。
 「寒かったよね。紅茶でも淹れるから」
 「あっ……」
 背中に手を伸ばして、歯を噛みしめる。
 考えろ。
 考えろ。
 整理するんだ。
 「はい」
 カップを渡される。
 温かい。
 一口飲むと、頭がスッキリした。
 「で、なんだった?」
 話を促される。
 決心はついた。
 あとは踏み出すだけ。
 「先生」
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