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どこまでも玩具
第11章 立たされた境地
 着替えを抱えて、チャイムをまた鳴らす。
 バスタオルを肩にかけた類沢が笑いながら扉を開けた。
 午後9時。
 時間は早い。
 端から見たら、俺の家みたいに見えんのかな。
 そんな下らないことを考えて入る。
 「向こうでシャワー浴びてくれば良かったのに」
 「湯冷めで来るまでに風邪引きますし」
 本当の理由はちがう。
 「夕食たべる?」
 「先生は?」
 「朝から食べてないけど」
 「じゃあ、食べましょうよ」
 シャワーを浴びる。
 大理石調の綺麗なバスルーム。
 シャンプーがまた見たこともないガラスの容器に入っている。
 あの香りは香水じゃなくてこれかもしれない。
 匂いを確かめ、数滴泡立てる。
 浴槽に浸かって、突然バクバクと心臓が騒ぎ始めた。
 そういえば、初めてだ。
 自分から泊まりたいといって、こんなにゆっくり風呂に入るのは。
 家族?
 恋人?
 パシャリと顔に水をかける。
 そのまま手をなぞるように下ろしながら自分に呆れた。
 バカみたいだ。

 ドライヤーをかけて、寝間着に身を包む。
 リビングには、良い香りが漂っていた。
 「何作ったんですか」
 「キノコのリゾット」
 「リゾート?」
 「……紅茶かコーヒーどっちにする?」
 なんだか無視された気分だが、俺はコーヒーを頼んだ。
 凄い。
 レストランそのものだ。
 色付けのパセリも。
 細長い白皿には、カプレーゼが盛り付けられている。
 「類沢先生って……料理師免許持ってますよね」
 「そんなの取るのが手間だよ」
 席に着きながら呟いた。
 素人の料理じゃない。
 俺は手を合わせ、いただきますと囁いた。
 「今時珍しいね」
 「何がですか?」
 「いただきます」
 「そうですか?」
 スプーンを置いて、類沢が手を見つめる。
 「孤児院では毎食やっていたんだけど、高校に上がると誰もしていなかったね」
 俺は赤面する。
 もしかしたら、弁当に手を合わせていたのは俺だけかもしれない。
 「されると嬉しいもんだね」
 「……ですね」
 留守番の時、美里に作ってあげたことがある。
 側で心配そうにみていた美里が、皿を前にして手を合わせたのは何か感動だった。
 ええ?
 俺、まさかこんだけ類沢に料理ご馳走になっといて、したの今が最初?
 類沢はワインを飲んでいる。
 気にする方が変だ。
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