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どこまでも玩具
第12章 晒された命
 冬休み一日目。
 俺は類沢のベッドの上で、それを迎えた。
 まだ、朝早い。
 携帯を開くと七時半だった。
 眠気を引き摺る脳で夢を思い返す。
 夢。
 考えたことを整理してくれる。
 ただ、あんな結論はいらなかった。
 俺は夢に現れたタンスの位置を眺めてみる。
 そこには壁が広がっているだけだ。
 あんなにハッキリあったのに。
 欠伸をする。
 顎が少し痛い。
 首を回して、布団から出る。
 類沢はいなかった。
 メモが置いてある。
 ―裁判の件で出掛けてくる。誰か来ても無視して―
 朝食もそばにある。
 何時に出て行ったんだ。
 弁護士に会いにいったんだろうか。
 まさか、県外?
 窓からガレージを見ると、案の定車はない。
 いきなり一人になってしまった。
 結局昨日は俺が先に寝ちゃったし。
 「……ええ! なんだそれ!」
 頭を抱えて今の考えに愕然とする。
 俺はやっぱり、おかしい。
 アカの言葉を思い出す。
 そうなのか。
 ありえないことが起きているのか。
 朝食をレンジに入れる。
 ボタンに指を押し付け、頭を振る。
 瞼が重い。
 夢が長すぎたか。

 朝食を食べ終え、着替えしか持ってこなかったことを思い出す。
 本当に受験生か俺は。
 やることがない。
 その時、寝室の机の上にデジカメを見つけた。
 フラッシュバックのように映像が蘇る。
 ―大胆な一枚撮れたよ―
 ―これ引き伸ばして保健室に貼ろうか?―
 心臓が早鐘を打つ。
 震える手でカメラを手に取る。
 バッテリーが無ければいいな。
 点かなければいいな。
 そんなことを願いながら、電源を押した。
 画面に床が映る。
 点いてしまった。
 急いでそれを元の位置に戻そうとする。
 けど指が離れない。
 また両手に包む。
 再生に切り替える。
 ドキドキしすぎて眩暈がする。
 俺はなにをしているんだろう。
 最新の写真に目が止まった。
 それは、昨夜のだった。
 俺の後ろ姿。
 着替えを取りに行くと言って、出て行ったときのだ。
 闇の中、街灯に照らされた背中。
 口を押さえてしまう。
 なんて……嬉しそうに走ってるんだ、俺。
 恥ずかしくなるほど。
 類沢は、なにを思ってレンズ越しに俺を見ていたんだろう。
 一つ前に送る。
 どこだろう。
 夕日が写っている。
 ハッとした。
 屋上だ。
 学園の。
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