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どこまでも玩具
第2章 荒らされた日常
「なに?」
金原が聞いたこともない冷たい声と共に振り返る。
「俺は大丈夫だから…」
スッと目が細まる。
これ、あれだ。
類沢と同じ目。
俺は怖くなって後ずさる。
「大丈夫?」
バイブを持った手を無理やり掴まれる。その物体を視界から遠ざけようと顔を逸らすが、金原の力は緩まない。
「こんなもの使われて大丈夫なの? なぁ、瑞希」
「…」
俯くしかない。
「…絶対殺す。腕へし折って爪剥いで、首絞めて殺す。類沢と篠田だったな」
去ろうとする金原の肩に縋る。
「瑞希?」
今にも見境なく人を殴り飛ばしそうな金原は、荒い息を静めて俺を見る。
止める理由が解らないように。
俺だって衝動任せだ。
「……金原までさ、襲われたらどうすんだよ」
声が震える。
さっきまでの時間など思い出したくもない。
行為が終われば服を着せられ、何事も無かった様に振る舞う二人の前で泣くこともできない。
金原とアカが入ってきた時も、助けを叫びたかったが、類沢の圧力がそれを留めた。
「みぃずき、優しいね」
いつの間にか、トイレの入り口にアカが立っていた。
「でも、俺らだって無力じゃないよ」
静かに、言い聞かせる口調。
アカらしいな。
「殺すまではいかなくても、みぃずきにした仕打ちの代償は払わせてやれる。このままになんてしない」
また目が熱くなる。
右手で握り締めたバイブに更に力をかける。潰してしまう位。
「瑞希はどうしたいの?」
いつもの穏やかな金原が訊く。
「俺は…」
―体罰だからさ―
―瑞希、可哀相だね―
類沢の言葉が脳を煮えたぎらせる。
口には篠田のものの感覚がまだ残っている。
「俺は…」
誰か、助けて、許して。
ずっとそう願ってた。
でも誰も来なくて。
金原とアカがじっと言葉を待っている。
喉がヒリヒリする。
何とか絞り出したい。
今の思いを。
なのに。
脳裏に類沢の差し出した携帯の画面が過ぎる。
―あぁ…金原や紅乃木にバラされたい?―
言えない。
言ったらあの自分を知られる。
言えない。
「言えよ」
金原が肩を掴む。
「聞くよ」
アカも反対の肩に手を添える。
二人が目の前にいる。
恥ずかしいじゃんか。
「…止めさせて欲しい」
思いが堰を切って流れる。
「もう嫌だ…止めたい!」