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どこまでも玩具
第12章 晒された命

 ここ、どこだっけ。

 また別の場所にいる。
 もう何回目?
 瞬きする間に知らない場所。
 学校だったり、見たことない公園だったり。
 誰かの車の中だったこともある。
 でも、俺は知らない。
 だからと言って、どこに行くべきかもわからない。
 思い出そうとすると、頭が割れそうに痛くなる。
 誰かが呼んでるから、帰らなきゃいけないのに。
 どっちに行ったらいいのかわからない。
 覚えているのは、手術台。
 引きつる痛みがまだ心臓に残っているんだ。
 寝かされた後、どうなったんだ。
 ザクッ。
 ああ、またこの音。
 ザクッ。
 心臓を突き破るようなナイフで肉を切る音。
 勝手に胸の筋肉が収縮する。
 頭まで痛みが貫く。
 ハァハァと息切れをし、座り込む。
 一体、俺はどうしちゃったんだ。
 ザクッ。
 痛い。
 誰か。
 助けて。
 「瑞希ちゃん」
 え?
 「誰?」
 小さな砂場。
 子供部屋。
 じょうろとか、ボールとか散らばっている。
 ああ、そうだ。
 ここは幼稚園。
 俺が通っていた幼稚園だ。
 「覚えてないなんて、あんまりだね」
 裾を掴む指に振り返る。
 栗色の髪に、見覚えある制服。
 にこりと笑った彼女を、俺は知っている。
 「ねぇ、瑞希ちゃん。決断は辛かったね」
 「……え」
 彼女は砂場にしゃがみ、掬った砂をサラサラと指の間から落とす。
 見たことある仕草。
 「私はちゃんと見ていたよ」
 「なに、を」
 「瑞希ちゃんの頑張った姿、見ていたよ」
 あ……
 頬を伝う涙を押さえる。
 「泣いていいんだよ。瑞希ちゃん本当に本当に辛かったんだから」
 ポロポロと涙が砂の上に落ちる。
 彼女も涙目になって微笑んでいた。
 「あのとき、命を投げ出すなんて思わなかった。でもね、それが三人を救ったんだよ」
 「……三人?」
 影が揺れる。
 頭の中で。
 知らない男が二人。
 「んーとね。それは瑞希ちゃんが自分で思い出さなきゃいけないこと」
 「君は、誰なの? なんで俺のこと知っているんだ」
 「私は」
 ザクッ。
 「あぁあっ!」
 胸を押さえる。
 「瑞希ちゃんっ」
 力が入らない。
 息が止まる。
 ぼんやりする脳とは裏腹に、目の前の景色が彩色帯びてゆく。
 綺麗。
 「ダメ!」
 その声にハッとする。
 「瑞希ちゃんは、まだ来ちゃダメ」
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