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どこまでも玩具
第13章 どこまでも
病院に着く。
エンジンを切って、シートベルトを外す。
「407号室だよ」
「え」
雛谷は車から降りない類沢を不思議そうに見つめる。
「一人の方がいいんじゃないの」
「あ……いいんですか」
「間違えないようにね」
バタン。
類沢はミラーで彼の背中を眺めた。
雛谷がしたことは決して認められないけど、本気で好きだからしたこと。
多分まだ、ライバル心を燃やしているんだろう。
これが篠田だったら行かせなかった。
自分と同じ衝動を経験した彼だからこそ、一人で行かせたかった。
瑞希の部屋を見上げる。
カーテンの中は見えない。
シートにもたれる。
今夜は満月だ。
白い円が見下ろしている。
知ったような顔で。
類沢はそれを睨みつけてから、目を瞑った。
残像が蒼く光る。
眠気が少しずつ押し寄せて来た。
激しいノックに目を開ける。
雛谷が窓を殴るように叩いていた。
すぐにドアを開ける。
「どうしたの」
「瑞希が……っ」
二人は急いで病室に向かった。
医者が先に病室に入ってゆく。
動悸が激しくなるのを留めながら、後に続いた。
看護師達がせわしなく動き回っている。
「さっき、突然心拍数が乱れて……ナースコールを押したらこの騒ぎで」
雛谷は肩を震わせ、口を押さえていた。
駆け上がって来たせいもあってか顔色も悪い。
だが、気にしてはいられなかった。
そっと近寄る。
「先生! 血圧下がってます!」
口々に瑞希の異常が叫ばれる。
目まぐるしい。
騒がしい。
その中心で、静かに眠る瑞希。
押し出されるまで、類沢はその顔を見つめていた。
生きている瑞希を焼き付けるかのように。
廊下で座っていると、医師がやってきた。
雛谷も落ち着きを取り戻し、一緒に立ち上がる。
「……命に別状はありません」
「良かったぁ」
雛谷が息を漏らす。
「ただ、今回かなり心臓にも負担がかかりましたし……今夜意識が戻らなければ、このまま」
「脳死になる可能性があるんですね」
類沢のはっきりした問いに、医師は黙った。
答えたと同じだ。
類沢は医師や看護師が去った病室に入る。
機械音しかしない。
変わらない。
昨日と変わらず眠っている。
でも、体は限界だ。
「送るよ」
類沢は雛谷に呟いた。
「僕は泊まるけど」
エンジンを切って、シートベルトを外す。
「407号室だよ」
「え」
雛谷は車から降りない類沢を不思議そうに見つめる。
「一人の方がいいんじゃないの」
「あ……いいんですか」
「間違えないようにね」
バタン。
類沢はミラーで彼の背中を眺めた。
雛谷がしたことは決して認められないけど、本気で好きだからしたこと。
多分まだ、ライバル心を燃やしているんだろう。
これが篠田だったら行かせなかった。
自分と同じ衝動を経験した彼だからこそ、一人で行かせたかった。
瑞希の部屋を見上げる。
カーテンの中は見えない。
シートにもたれる。
今夜は満月だ。
白い円が見下ろしている。
知ったような顔で。
類沢はそれを睨みつけてから、目を瞑った。
残像が蒼く光る。
眠気が少しずつ押し寄せて来た。
激しいノックに目を開ける。
雛谷が窓を殴るように叩いていた。
すぐにドアを開ける。
「どうしたの」
「瑞希が……っ」
二人は急いで病室に向かった。
医者が先に病室に入ってゆく。
動悸が激しくなるのを留めながら、後に続いた。
看護師達がせわしなく動き回っている。
「さっき、突然心拍数が乱れて……ナースコールを押したらこの騒ぎで」
雛谷は肩を震わせ、口を押さえていた。
駆け上がって来たせいもあってか顔色も悪い。
だが、気にしてはいられなかった。
そっと近寄る。
「先生! 血圧下がってます!」
口々に瑞希の異常が叫ばれる。
目まぐるしい。
騒がしい。
その中心で、静かに眠る瑞希。
押し出されるまで、類沢はその顔を見つめていた。
生きている瑞希を焼き付けるかのように。
廊下で座っていると、医師がやってきた。
雛谷も落ち着きを取り戻し、一緒に立ち上がる。
「……命に別状はありません」
「良かったぁ」
雛谷が息を漏らす。
「ただ、今回かなり心臓にも負担がかかりましたし……今夜意識が戻らなければ、このまま」
「脳死になる可能性があるんですね」
類沢のはっきりした問いに、医師は黙った。
答えたと同じだ。
類沢は医師や看護師が去った病室に入る。
機械音しかしない。
変わらない。
昨日と変わらず眠っている。
でも、体は限界だ。
「送るよ」
類沢は雛谷に呟いた。
「僕は泊まるけど」