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どこまでも玩具
第3章 枯らされた友情
まずい。
この距離は逃げられない。
オレは踵を上げ、拳を固めた。
臨戦態勢だ。
目の前の類沢の視線を真っ直ぐ受け止め、威嚇する。
その美しい顔が途端に近くなる。
え。
なにが……。
生暖かい感触が口の中に広がる。
顎を掴まれ、上を向かされる。
「んん……」
何度も舌先を噛まれ、腰が落ちそうになる。
教師に、男にキスされてる屈辱感が体を浸した。
乱暴で長い口づけが終わると、オレは思い切り類沢の腹を殴った。
殴ったつもりだった。
「だから、学習能力無いの?」
その拳は、大きな手に包まれていた。
「てめ……瑞希にヤったみたいにオレも犯す気かよ」
「なに? そうして欲しいの」
耳までカァッと熱くなる。
馬鹿なのかコイツ。
クラクラする頭を押さえ、オレは壁際から離れる。
その隙を与えず、類沢は右手を掴み捕らえた。
「逃がすと思った?」
何故か涙が溢れてくる。
類沢の姿が滲み、現実味が消える。
なんで泣いてんだ。
類沢が涙を拭い取る。
あぁ、そうか。
瑞希の復讐に来といて、見事手中に嵌った自分が情けないんだ。
「…はぁ」
類沢が溜め息を吐く。
すぐそばの机からティッシュを数枚持ってくると、オレの頬に擦り付けた。
痛い上に、アルコールの香りが鼻につく。
「止めろって」
両頬がヒリヒリする。
類沢は見下す様に笑った。
「口にコレ突っ込んだら……その鬱陶しい泣き声聞かなくて済むかな?」
「…え?」
瞬きする間もなく、口を開かされ、濡れたティッシュを何枚も押し込まれた。
「ふぐッ」
余りに強い刺激に喉が悲鳴を上げ、舌先から水分が奪われる。
涙は溢れても、声は出ない。
類沢はその状態の口を塞ぎ、マスクを付けた。
一気に呼吸が難しくなり、オレは必死に抵抗するが、両腕を拘束されているので何も出来ない。
「お前には興味無かったんだけどさ」
ギリッ。
ロープのような何かに腕を縛られる。
最早、無力と化したオレを、類沢は一番端のベッドに押し倒した。
それから直ぐにカーテンの向こうに消え、施錠の音と電気が消えるスイッチの音が響く。
「……ふ…んんッッ」
どれだけ首を振ってもマスクは外れないし、舌を動かしてもティッシュは出て行かない。
このまま窒息死すんのかな。
いや、そんなに楽じゃないか。