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どこまでも玩具
第3章 枯らされた友情

 「え?」
 俺は立ち止まって、紅乃木の俯いた頭を見る。
 朱髪が、夕日に照らされさらに色を深めている。
 「みぃずき……最低なことしちゃったんだ」
 紅乃木の真剣な態度に、俺は一目を気にして公園に向かった。
 通学路から少し奥まった場所にあるので、誰かに聞かれる心配は無いだろう。
 向かいながら、まるで昨日と立場が逆だと思ってしまった。
 相談して。
 相談にのって。
 そうして今まで三人でやってきて。
 だが、俺は立ち尽くす友の姿に肩が強ばるのを感じた。
 紅乃木は瞬き一つせずに目の前の空気を睨んでいた。
 「ア……カ?」
 数秒して、ゆっくりその瞳がこちらをとらえる。
 今、どこにいるのか忘れる瞬間だった。
 ただ事じゃない。
 それだけは痛感した。
 怖じ気づきながらも、唾を飲み込み紅乃木を促す。
 重たい唇が何を告げるのか、全身が聞き耳を立てた。
 「……金原を助けらんなかった」

 カナハラヲタスケランナカッタ。

 俺の脳がそれを認識するのに随分時間がかかった。
 「なに言って」
 だが、もう気づいてた。
 金原は昨日復讐を宣言していたから。
 「昨日の夜、七時だった」
 「類沢が?」
 こくん。
 紅乃木は力なく肯定した。
 世界がクルクル回ってる。
 もしくは俺の目がグルグル回ってるのかも知れない。
 視界がはっきりしない。
 「アカ……は?」
 夕日が沈む。
 静かな街並みが黒く染まってゆく中で、バクバク心臓の音が響く。
 紅乃木は頭を振った。
 「よかっ……」
 良かった。
 その言葉が続かなかった。
 どっちなんだろう。
 嬉しいのか、苦しいのか。
 「金原を裏切ったんだ」
 「どういう」
 「逃げ出したから。約束したのに時間通りに保健室前に着いたってのに怖くなって金原が苦しんで助けを求める声を聞いておいて来るのを信じていた金原を裏切ってダッシュで逃げ出したんだ卑怯者卑怯者卑怯者卑怯者卑怯者卑怯者」
 「アカ!!」
 紅乃木は狂ったラジオのように呟き続ける。
 両手を掴んでも力任せに抜け出した。
 いやだ。
 なんだこれ。
 「アカ……落ち着けって」
 ピタ。
 今度は電源が切れたように紅乃木は固まった。
 俺は泣きたくなった。
 「ごめん」
 「…」
 「みぃずき、金原ごめん」
 ため息すら出ない。

 これから

 どうなるんだよ

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