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どこまでも玩具
第5章 明かされた記憶
「俺はどうすりゃいいんだ」
とりあえず職員室の脇にある小会議室で四人は席に着いた。
篠田が呆れながらそう吐き出し、生徒三人も同調する。
「まぁ、新任の類沢先生の下で騒ぎが起ころうが上は動かん。ほら」
篠田はそばの棚から紙を数枚取り出して渡す。
まさかとは思うが。
「反省文?」
明らかに不服そうなアカに鋭い睨みが飛ぶ。
「……なんなら反省室でもいいぞ」
「書かせて頂きます」
アカの口調から、その恐ろしさを想像した。
「明日までな。あぁ、仁野はいい」
「え? いんですか」
「お前は被害者だろ」
有紗は設定を思い出したとばかりに舌を出す。
「そうですぅ」
「早く教室戻れ」
ジャンパーを抱えたアカを教室に戻すわけにもいかないので、有紗と三人で例の如くバスケ部の部室へ。
「あれ、なに?」
「類沢だろ」
「だから、なにあれ」
アカの疑問は全員が感じている。
だから頭が痛む。
恩を着せたつもりだろうか。
それとも、ただの気まぐれか。
「センセって、いつもああなの?」
「知るか」
何故かアカが有紗にだけ冷たい。
むしろ殺気すら見える。
「……なによ。私だって止めようと必死だったのよ!」
「なんだろうが、彼氏犯した男とヤりたいんだろ」
有紗がガタリと立ち上がる。
ワナワナと怒りを押さえつけ、数秒後また座った。
大きく深呼吸している。
今、争ったところで誰も得しない。
それはみんなわかっている。
「悪い……みぃずき、あいつは無理」
「……ん」
俺はただ頷いた。
希望はあった。
でも、アカが類沢に危害を加えたら、多分誰もが不幸になった。
なら、不幸なのは俺だけでいい。
「あ」
突然有紗が声を上げる。
人差し指が、アカのポケットを指していた。
「それ! 懐かしい!」
「あ?」
取り出したのは、虎と熊のキーホルダー。
見たことがある。
バスケ最後の試合の。
「あたしが圭吾に渡したのだ」
「じゃ、捨てる」
「ちょ、ちょっと!」
アカの手を掴み、有紗は奪い取った。
「これ、御守りなんだから」
「なんの?」
有紗は俺を見て、少し顔を緩めた。
「圭吾が、最後の試合に勝ちますように」
「終わってんじゃん」
「それと」
有紗は力強く言う。
「圭吾と周りが幸せになりますように」