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どこまでも玩具
第6章 剥がされた家庭

 類沢はすぐに家中の窓を開けた。
 それから掃除機を五分で済ませると、俺に洗濯機の位置だけ尋ねて洗濯を始めた。
 同時にキッチンに行くと、買ってきた具材で料理をする。
 俺は呆けたままそれを眺めた。
 わからなくなる。
 なんで、類沢が家にいるのか。
 まさか、心配して訪ねてきたのか。
 まさか。
 どうせ見返りを要求するんだろう。
 そしたら包丁持って抗議してやる。
 人の弱みにつけこむ最低な奴ってことで、今までの恨みをぶつけてやる。
 「ご飯、出来たよ」
 「うわっ」
 俺は跳ね起きた。
 それからリビングの机を見る。
 湯気をたてる雑炊と、おひたしと味噌汁。それに鯖。
 「和食しか作れないけど、栄養価は高いから」
 「……ありがとう、ございます」
 類沢はフライパンを洗って、それから冷蔵庫に買ってきたものを詰めると、食べてる俺の横でコートを着た。
 「じゃあ、お大事にね」
 「えっ」
 予想外過ぎて声を上げてしまう。
 類沢も驚いて振り返る。
 「なに?」
 「あ、いや……帰るんだ」
 「まだ家事あった? あぁ、お風呂沸かそうか?」
 「違くて」
 類沢はコートを抱えて首を傾げる。
 なんで呼び止めたんだっけ。
 あぁ、余りに予想外だったからだ。
 予想通りなら、どうなっていた。
 類沢と包丁バトル?
 何考えてんだ俺。
 風呂沸かして欲しかった?
 違う。
 望みは一つだけ。
 「あの……折角作ってもらったんで」
 それしか言えなかった。
 しかし、彼は汲み取った。
 「ああ、一緒に食べていいの?」
 俺は小さく頷いた。

 確か、最後に見たのは保健室で篠田にアカ達と連れ出される時か。
 なんでか事情を誤魔化して。
 あれはアカを庇ったのか。
 それとも篠田を信用していないのか。
 もしくはアカが云ったとおり、俺だからか。
 「訊きたいことがあるなら答えるけど」
 類沢は雑炊をよそりながら言った。
 「泣きはらした目しちゃってさ」
 「そりゃ仕方ないだろ!」
 「両親には……ご冥福を祈るよ」
 「は」
 なんで。
 類沢は目を伏せる。
 「ニュース、見たからさ。宮内って名字は珍しいし」
 「あ……」
 知ってたんだ。
 知ってて来たんだ。
 なら、その理由なんて訊くまでもない。
 「一人なんだよね」
 「……はい」
 「弟妹は?」
 「妹が一人」

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