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どこまでも玩具
第7章 阻まれた関係
「瑞、希」
ショックで表情がつくれない。
凄惨な光景。
瑞希の体は冷え切っていた。
ギュッと抱き締め、顔に手を添える。
「瑞希、起きろ」
ユラユラ揺れる体。
しばらくして、呻き声を漏らし瑞希は目を開けた。
認識するのに時間がかかったらしく、数秒して身を縮める。
「る……ぃさ、わ先……せ」
堪えきれずに泣き出した瑞希の背中をさする。
「もう大丈夫。泣いても喚いても誰も怒ったりしないから。誰も傷つけないから」
傷ついた人間が欲しいのは、保証。
もう、安全なのだという保証。
類沢はそれをわかった上で、彼に投げかけた。
その安心で包み込むように。
「怖かったね」
「っく……ぅう」
無防備な瑞希から目を背けたくなる。
自制心を擽られるから。
だが、しっかり真っ直ぐに抱き締めた。
そうする必要がある。
義務もある。
権利はわからない。
―瑞希をどうこう言う権利はないんじゃないですかあ!?―
その通りだ。
始めに傷つけたのは自分。
細い肩を撫でる。
温めるように。
カタカタ震える手を握ってあげる。
護るように。
「雛谷か?」
瑞希はビクリと反応した。
頷いて、首を振る。
なにか、ワケがある。
「説明できる?」
瑞希は顔を上げ、涙を拭いた。
痛々しい姿だ。
「……雛、谷先生だ……けじゃないんです」
「え?」
視界が眩む。
混乱が脳を侵す。
「どういうことかな」
あくまで口調は荒げない。
でないと壊れてしまう。
「……放課後、雛谷先生が来て」
何があったかは言えないようだ。
類沢も突っ込まない。
「先生が……いなくなった後に、突然扉が開いて。知らない男子達が……」
瞳孔を開いて震える瑞希を、ただ見つめる。
思い出してるのだろう。
「みん、な……ビール持ってて……俺、見つけて、逃げよ、うとしたら……殴られて」
「わかった」
類沢は瑞希を腕の中に包んだ。
胸元で泣き声が響く。
目を瞑り、瑞希の髪にキスをする。
眠ってしまった瑞希を車に乗せ、自分の家に向かう。
このまま放っておくことは出来ない。
煙草を吸い、夜の世界を眺める。
ハンドルを握る手に力が篭もり、キシリと音を上げる。
雛谷。
アクセルを踏む。
瑞希を襲った男子達。
煙草を折り曲げ、類沢は嗤った。