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どこまでも玩具
第7章 阻まれた関係

 家に着き、瑞希の体を軽く拭き処理をすると、溜めた風呂に入れてやった。
 ゆっくり考えたいこともあるだろうと、一人にしてあげた。
 キッチンで澄まし汁など、刺激の少ないものを作る。
 茹でた野菜を胡麻で和える。
 温かいものも。
 全てが淡々と行われた。
 料理を用意し終えると、リビングのソファに腰掛け煙草に火を点けた。
 瑞希が出てきたとき、丁度一箱使い果たすところだった。
 今日一日で二十本以上吸っている。
 とても保健に携わる者とは思えないな、と自嘲する。
 無言で夕食を終え、自分の服を着た瑞希を寝室に案内する。
 「おやすみ」
 「あ……」
 ベッドに座ってぼうっとしている瑞希の肩にポンと触れ、出て行った。
 今、添い寝などできる状態ではなかった。

 加湿器と暖房を調整して、リビングに戻った。
 あのまま自分が瑞希を見つけなければ、どうなっていただろうか。
 無意識に新しい煙草の箱を捻り潰していた。
 あの暗い倉庫で。
 一人で。
 汚れたままで。
 ギチギチと箱が悲鳴を上げる。
 それをゴミ箱に投げ捨て、ソファーに寝転がった。
 ベッド替わりになる長いタイプなので、ここで寝るのは慣れている。
 だが、今日だけは固いクッションや、ギシと軋む音が気になって仕方が無かった。

 「休んでて良いから。誰も来ないと思うけど、チャイムが鳴ったら無視して」
 朝食を残して出勤する。
 あの状態の瑞希を連れて行くのは、余りに酷すぎた。
 学校に着き、保健室に入る。
 途端に頭痛が襲った。
 寝てないせいだろうか。
 冷たい水を喉に流し、息を吐く。
 鏡を見ると、闇のような目で見返してくる自分がいた。
 大丈夫。
 やるべきことはもう決めた。

 五限になり、職員黒板を眺め予定通りであることを確認する。
 それから化学準備室に向かった。
 雛谷は一人。
 静かに入ると、振り向く間もなく後ろからハンカチを口に押し当てた。
 多分、彼が使ったであろう方法。
 一分もしないうちに、力が抜け、意識が無くなった。
 背中に背負い、授業中の教室を避けて屋上に向かう。
 冷たい風が吹きすさぶ。
 雛谷を倉庫に隠し、煙草をくわえた。
 ああ。
 なんて不味い。
 空を見上げて、白い息を吐く。
 保健室に戻り、全ての事務を終わらせる。
 放課後、六時を過ぎてから屋上に足を運んだ。

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