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真紅の絆
第3章 二話
歳は桃丸と同じ…当時九歳であった。
心に深い傷を負った才蔵を、雅影と桃丸は献身的に看病した。
その頃から才蔵は姫野家に忠誠を誓っている。


「殿は人陰に隠れてお前のことを折檻している。なんでだ?」
「…へ?折檻?殿が俺に?」
「こないだ物陰からお前の悲鳴がした。」
「…っ!ち、違!あれは折檻とかじゃなくて…!」
「隠すな。悪かった…。助けようと思ったのだが…。なにか危険な匂いもしたので立ち入れなかったのだ。でも光保には言っておいた。きっと光保がなんとかしてくれるだろう」

光保――那須光保(なす みつやす)もまた、雅影の小姓だ。桃丸よりも立場が上の、小姓頭として政務をこなしている。通称、みっち。桃丸にとっては兄のような、親友のような人物だ。

才蔵と光保は、ここ二年ほどの付き合いだが、光保は才蔵を弟のように可愛がっている。才蔵もまた、光保を慕っているようだった。

しかし…才蔵の話を聞いた光保なら、折檻とは思わないだろう。
なんだか顔から火が噴きそうだ。

雅影は桃丸が止めても、野外で事におよぶことがある。
その現場を見てはいないのだろう。「音」だけで判断すれば、どんな拷問をされているのかと思うだろう。

――やはり、父上の言ってることは正しい。俺がちゃんとしてないから、殿まで変な目で見られちゃう。

せっかく浮上した気持ちが、どーんと沈んでいくのを感じていた。

「桃、そんなに落ち込むな。折檻なら今度こそ、俺と光保がなんとかしてやる」
「折檻じゃないってば!」
「殿は俺達には優しいいいアニキみたいな感じだが…よくわからないな。桃が特別に嫌われているのかもしれぬ。光保に言って…」
「もうみっちに言わなくていいってばー!」

光保だって、そんな相談持ちかけられても苦笑するだけだ。
「殿もお盛んですねぇ」などと言われて終わりなのは目に見えている。恥をかくのは桃丸だけだ。

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