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官能エッセイ集 ~官能の景色~
第14章 特別な日
初夏だった。
彼女と付き合い始めて一ヶ月が過ぎようとしていた。
私たちは会社帰りに、いつもの通り、いつもの場所で落ち合うと、いつもの通り、人けのない、舗装もされていない、山道を車で登って行った。
ここ二週間ぐらいで、私は車の中で彼女に愛撫できるような仲まで進展していた。
でも、それから先へは進めないでいた。
そのタイミングがつかめないでいたのだ。
彼女とひとつになるその時は、何か特別な日にしたかったのだ。
そして、その時は時間を掛けて愛し合いたいと思っていた。
その日をいつにするか、決めかねていたのだ。
だからその日も、いままでと同じような日のはずだった。
その山道から更に細い脇道に入る。
この道は初めてだった。
急な上り坂にる。
しばらく行くと行き止まりになり、何度か切り返した後、車の鼻先を今着た方向に戻した。
車を停めた。
運転席側は雑木林、反対側は崖になっていた。
崖の方向に満月が低く顔を出していた。
大きかった。
明るかった。
本も読めるだろうと思った。
彼女もその月を見ていた。
その彼女を無言で抱き寄せる。
「あっ……」とだけ声を出す。
彼女と付き合い始めて一ヶ月が過ぎようとしていた。
私たちは会社帰りに、いつもの通り、いつもの場所で落ち合うと、いつもの通り、人けのない、舗装もされていない、山道を車で登って行った。
ここ二週間ぐらいで、私は車の中で彼女に愛撫できるような仲まで進展していた。
でも、それから先へは進めないでいた。
そのタイミングがつかめないでいたのだ。
彼女とひとつになるその時は、何か特別な日にしたかったのだ。
そして、その時は時間を掛けて愛し合いたいと思っていた。
その日をいつにするか、決めかねていたのだ。
だからその日も、いままでと同じような日のはずだった。
その山道から更に細い脇道に入る。
この道は初めてだった。
急な上り坂にる。
しばらく行くと行き止まりになり、何度か切り返した後、車の鼻先を今着た方向に戻した。
車を停めた。
運転席側は雑木林、反対側は崖になっていた。
崖の方向に満月が低く顔を出していた。
大きかった。
明るかった。
本も読めるだろうと思った。
彼女もその月を見ていた。
その彼女を無言で抱き寄せる。
「あっ……」とだけ声を出す。