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宵闇
第11章 惑い


ひく、としゃくりあげるような声を出してしまった時だった。

不意に掴まれた腕。
あ、と思う間もなく、そのまま引かれた。


「────!!」


抱き止められた身体。
急に強く感じた村上くんの匂いに戸惑う。
反射的に彼の胸を押そうとしたものの、背中に回されている腕の力がより強くなり、それが敵わない。


「……っ、村上くん……! 離して……!」

「嫌だ」

「お願い……!」

「……離すかよ」


耳元に落とされた呟き。
さらに強く抱きしめられた私は抵抗を強くするも


「俺にしろよ、桜井……」


構わずに続けられる想いに、身体を強張らせながら首を振る。


「先輩には妹としてしか見られてないんだろ?
……だったら先なんかねーじゃん」


彼の口からそんなふうにあらためて突きつけられた現実を、否定したいのにできない。
勝手にこぼれてくる涙。


「……っ……く……」


力が抜けていく。
いつの間にか、村上くんに身体を預けるようにして私は泣きじゃくっていた。


「今は先輩のこと好きなままでいいから。
……むしろ先輩を忘れるために俺のこと利用してくれていい」


だから──と続けようとした彼の言葉の続きを思い、首を振りその先を拒む。


「……だから俺と付き合って、桜井」


それでも村上くんは言った。
そう、はっきりと私に。


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