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宵闇
第1章 prologue
その女の子は、ちょっと緊張した表情で僕を見た。
「これから、よろしくね」
僕の言葉に、戸惑いがちに頭を下げる。
──そう。
僕たちが兄妹になったのは、僕が16で、彼女が13の秋だった。
あれからいくつの季節を共に過ごしただろう。
それと共に少しずつ、兄妹としてのつきあい方にも慣れていく。
本当の兄妹とはやはりどこか違いながらも、互いが互いを尊重する、穏やかな仲でいられるように……そう、考えていた。
──考えて、いたのに。
いつ、そのレールから外れていたのか。
なぜ外れていることに気づけなかったのか。
……いや。
本当は最初から外れていて、それに気づかない振りをしていただけなのか。
──ああ。
また、宵闇が静かに迫り来る。
逃れる術はどこにもない。
僕はただ、それに呑み込まれ……そこに佇むばかりで。
どうすればいいのか。
どこに行けばいいのか。
そう、自分の居場所すら──わからないでいた。