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キスの花束を
第8章 11年後
「今回も一緒にチリに行った後輩が
新田常務付き秘書の武田さんが結婚しないのはどうしてか、って
その話ばかりしてた」

「不倫してるんじゃないか?って?」

40になっていまだに表向きは結婚していない私の噂が飛び交っているのは知ってる。

「それならまだ許せた」
「へ~」

このワイン、当たりだわ。

「一度でいいから抱きたいって・・・」
「あっはっはっは。そんな話するんだ?」
「笑いごとかよ」

本当に不愉快だったらしい。
ツカサはムッとした顔をした。

家でのツカサは社内で見る、『スマートな森川さん』とは全く違う。

「あら。プライベートを明らかにしない海外事業部の森川さんだって
秘書課の噂になってるわよ」

私は意地悪くふふんと笑う。

「ツカサったら飲み会にも出席しないものね」
「だめ。俺飲み会なんかに参加したら、紗江子さんのこと自慢しそうで怖い。
秘密にしてる自信がないよ。
会社関係のプライベートは俺たちの結婚を知ってる
同期の2人と飲みに行くので十分」

「女子の間では年下の可愛い子と秘密の社内恋愛してるんじゃないかって噂よ?」

昨日、話題に上がった話を思い出して可笑しくなる。

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