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ひよこと野獣
第6章 ひよこ 陽菜の誤算
「陽菜…陽菜……」

いつもは口数の少ない先輩が何度も暗闇の中で私の名前を呼んでくる。
普段は落ち着いている先輩が何かに急かされるように私の唇を貪るように重ねていく。

先輩の短い髪の毛が私の額に触れる距離。
初めて味わうその距離は不思議と全然怖くない。

「先輩……」

「どうした?怖いか?」

「ううん。先輩とのキス、気持ちいい…」

「お前さぁ、そんな煽ってくるなよ」

先輩のため息が私の上から降ってくる。
くすくす笑うと先輩にまた唇を塞がれた。

ペンションのふかふかの布団の感触が背中から伝わってくる。
だけど匂いは先輩と私の汗の匂いの方が強く、初めてのはずなのにその匂いが自分を昂らせていくのが分かった。


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