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一夜の愛、人との愛
第15章 忘れられた痕跡
深夜2時。
二人の天使は、地球の夜空に姿を表わすと、闇に紛れながら、とあるマンションのベランダに降り立った。
カラカラとガラス窓をスライドして室内に入ると、室内の4隅にまじないを施して、玄関扉にも指先を向ける。
人々から忘れ去られた一室として、天海真理亜が住んでいた部屋の、時間と存在を歪めながら、ふと作業をしていたクレイルがベッドの上に置かれたものに目を止めた。
微かに青く光るそれは、過去に穢れた天使が触れたことを意味している。
浴室の中の鏡にヴェールを施したコーラルが、戻ってきて足を止めれば、兄はシーツの上のそれを手にして掲げていた。
「靴?」
弟の声に頷く兄は、だが、怪訝そうな表情を崩さない。
ふと玄関に目をやった弟が、対になる靴を手にして戻ってくれば兄に見せる。
右足にフィットするであろう、その靴にはザレムの痕跡が無い。
何故か、左の靴だけが、ザレムの手に触れて、そしてベッドの上に置かれていたらしい。
難しい顔で自分を見たクレイルに、金髪の天使は少し考えてからゆるく首を振った。
結局、天使達は、靴をそろえて玄関に置くと、部屋を綺麗に密閉し、人間界から遮断する準備を整え、エデンへ戻って行った。
彼らは知らない。
ザレムと出逢った夜に、何者かに襲われた真理亜が、
脱げた左の靴を取り返すことも出来ずに部屋に逃げ帰ってきたことを。
二人の天使は、地球の夜空に姿を表わすと、闇に紛れながら、とあるマンションのベランダに降り立った。
カラカラとガラス窓をスライドして室内に入ると、室内の4隅にまじないを施して、玄関扉にも指先を向ける。
人々から忘れ去られた一室として、天海真理亜が住んでいた部屋の、時間と存在を歪めながら、ふと作業をしていたクレイルがベッドの上に置かれたものに目を止めた。
微かに青く光るそれは、過去に穢れた天使が触れたことを意味している。
浴室の中の鏡にヴェールを施したコーラルが、戻ってきて足を止めれば、兄はシーツの上のそれを手にして掲げていた。
「靴?」
弟の声に頷く兄は、だが、怪訝そうな表情を崩さない。
ふと玄関に目をやった弟が、対になる靴を手にして戻ってくれば兄に見せる。
右足にフィットするであろう、その靴にはザレムの痕跡が無い。
何故か、左の靴だけが、ザレムの手に触れて、そしてベッドの上に置かれていたらしい。
難しい顔で自分を見たクレイルに、金髪の天使は少し考えてからゆるく首を振った。
結局、天使達は、靴をそろえて玄関に置くと、部屋を綺麗に密閉し、人間界から遮断する準備を整え、エデンへ戻って行った。
彼らは知らない。
ザレムと出逢った夜に、何者かに襲われた真理亜が、
脱げた左の靴を取り返すことも出来ずに部屋に逃げ帰ってきたことを。