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不条理な世界に、今日も私はため息をつく
第2章 コンビニはどこですか

「誰かいませんか~?」
砂漠で叫べど、返る言葉がなく。
あたしは途方に暮れて、項垂れて座り込んでしまった。
今日はなんて、厄日なんだろう。数時間前の、会社での涙と祝福ムードが、嘘のよう。
これからどうするよ、会社まで辞めたのに。
会社仲間だけではなく、親戚知人友人……大量に結婚招待状送りつけていいだけ結婚祝いを貰っておきながら、式の一週間前にて、敏感&アンアンのムキムキマッチョを溺愛した相手に、不感症扱いされてふられたなんて、言えるわけがない。
その上、今まで手にしていたはずの、銀行の通帳やキャッシュカードを入れていたヴィトンのバックは見当たらず、結婚資金にと貯めた全財産も手元から消えた。
結婚がない。恋人もない。金もなければ職もない。
笑ってしまうほどのないない尽くし。
結婚式場と披露宴、新居として購入したマンションは、キャンセルが効かず。仮に東京に帰れたとしても、聡が金を支払ってくれるのだろうか。あたしが出したマンションの前金&ローンと一緒に、慰謝料もふんだくれるだろうか。
現実的な問題が重くのしかかってくる。
こんなはずではなかったのに。
幸せに充ち満ちた未来が待っていたはずなのに。
青天の霹靂。急転直下。
哀しさが募るのは、置かれたあたしの立場であって、聡を失ったためじゃない。
そうでありたいとあたしは頑なに心に言い聞かせた。
はにかみながら告白してくれた聡。
緊張にどもりながらプロポーズをしてくれた聡。
前の恋に傷ついていた心を、不器用ながらも解きほぐしてくれた。
穏やかな時間が、心地よかったな……。
「…………っ」
忘れよう。
忘れなければ。
鼻の奥がつんとするのを堪えながら、あたしはぶんぶんと頭を振って、聡との思い出を振り切った。否、振り切ったと思い込むことにした。
前を向いて、生きていくために――。
だけど、しばらくは恋はしたくない。もうなんか疲れたから。

