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不条理な世界に、今日も私はため息をつく
第2章 コンビニはどこですか
見間違いだろうか。
砂から現われた怪物の正体がイケメンでしたなんていうことは、俄に信じがたい。
ご都合主義もいいとこだ。
あたしは砂漠の熱にやられて、また幻影を見ているのかも知れない。
死にかけているのかもしれない。
クルックゥの呪いを弾いたこの邪眼で、真実をよく見るのだ!
現実を取り戻すのだ!
だからよく見た。
目を凝らしてじっと見た。
邪眼(と思われる)部分を、指でこしこしと擦って、瞬きもせずに見た。
結論は――。
砂から現われたのは――
モデル真っ青の長身で長い手足を持つ、生唾もんの美男子でした。
ぼろぼろの服は最早服の機能は失われ(だが下半身だけは短くなっても覆い隠すという機能が生きているこの不思議)となっておらず、惜しまず晒しているのは、鍛えられたような日に焼けた逞しい上半身。
敏感&アンアンの、あの嫌味ったらしい隆々すぎる筋肉の付き方ではなく、まさに英雄好きなあたし好みの、"戦う男"の理想型。
野生のカタマリであるターザンじみたダサい恰好と、むさくてどろどろしている腰まである長い髪や、濡れた褐色の肌から筋を作る砂の変化形……深刻な汚泥を無視すれば、こちらを見ている顔は、気品すら漂わせて素晴らしい美妙な配置で整っている。……少々頬は痩けているが。
陰影が出来る高い鼻梁に、肉厚の唇。
斜めからこちらを見下ろす切れ長の目から覗くのは――
紫かがった暗い青……ミッドナイトブルーの瞳。
思わず吸い込まれそうになる、その寂しげにも見える瞳の色は、日本人とは思えない色をしていながら、それでも西洋人とは思えない……言わば東洋系(オリエンタル)の極上系。
片耳に付けた、豪奢なターコイズの大きな耳飾りが、男の首が傾げた時に、ゆらゆらと揺れた。
世界が違う。
まるで陽炎の向こう側にいるかのように夢幻の美を魅せて揺らめく彼は、異質な存在だった。