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不条理な世界に、今日も私はため息をつく
第2章 コンビニはどこですか
 くちゅくちゅという卑猥な水音が大きくなり、意識が朦朧としてきた時、突如水が喉の奥に流れ込んできた。


「飲め」


 これは男の唾液だとわかっているのに、拒めない。

 まるで濃度の高い麻薬かなにかのように、あたしの理性を薄めていく。


「うまいか……?」


 あたしはまるで水に群がる飢渇者のように、無我夢中でそれを飲み込み、さらに多くの潤いを求めて男の舌を音をたてて吸いあげる。

 すると男がびくんと体を震わせ、その規則正しい呼吸が乱れた。
 
 薄く目を開ければ、熱を孕んでいる男の瞳が、苦しげに細められてこちらを向いている。


 心なしかあたしから体を少し離そうとしているようにも思え、あたしは声にならぬ声でねだった。


「いか……ないで。ね、欲し……いの、もっと……」


「……っ、お前……」


 男から、喘いでいるような掠れた声を聞いたあたしは、体がかっと熱くなり、形ににならない甘い痺れがさらに強度を増して、輪郭と行き場を求めて体を暴れ始めた。


 なんかもうだめ。

 もう考えられない。

 もう立っていられない。


 初めての感覚をどう表現していいのかわからない。

 だけど怖かった。恥ずかしかった。 


 その躊躇の隙を見計らったかのように、足がかくんと支える力を無くして、下半身そのものから力が抜けてしまう。


 まさに、腰が砕けたのだ。

 初めて出会う、砂から出てきた男のディープキスに。
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