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不条理な世界に、今日も私はため息をつく
第3章 売られました

――処女でなければ、誰があんなどん引き女を相手にするかよ。さすがに、お前らが可哀想だから、食った後はやれねぇわ。次の女やるから、それで我慢しろ。
ある日聞いてしまった、彼の悪友達との会話。
彼はただの処女キラーで、愛情などなかったらしい。
ひとは、本性を隠してこそ、世を渡っていけると知ったあの時から、あたしは相手に応じて、演じる必要性を知った。
地元を離れた東京の短大では、処世術のために、近くの共学の大学との合同演劇サークルに入った。
――こんな俺のことを優先して動いてくれるなんて、マジ感激なんだけど。
見た目はチャラい。だけどいつも誤解されているのだと、寂しそうな顔を見せたサークルの同期にほだされ、彼の喜ぶ顔を見たいがために振る舞ったことは。
――は? デート? なんでそんな恋人みたいなこと、お前とやらなきゃいけねぇんだよ。お前とはただヤッて終わる、後腐れ無い間柄だろ?
付き合っているつもりだったあたし。彼が重い女は嫌だといったから、無理に軽い女を演じたら、都合のいい女に成り果てて終焉を迎えた。
だから次こそは、きちんと昔ながらの手順を踏み、双方の気持ちを確認しながら、一緒に未来を進めれば。
そう思って、失恋の痛手を癒やしてくれた聡と、結婚まで進んでたというのに。失いたくないから、彼に従順な地味子を演じていたというのに。
――お前不感症で抱いてもつまんないのが、結構気にかかっていたんだよね。俺としてはアンアン啼いて欲しいわけ。
なぜだ。なぜこうなる。
どこであたしは人生を間違った。

