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不条理な世界に、今日も私はため息をつく
第1章 破談になりました
 あたしは書いた。

 ええ、妄想を書きましたとも。


 その結果――。


 "意思疎通ができる日本語を話す、人間の男を求む。相手に望む職業は、一生遊んでいても困らないほどの財力を持つ、支配者か、英雄(ヒーロー)。王族可。年齢は成人以上、30歳以下。人から見目麗しいと大絶賛される血統書付のイケメンで、短小と早漏とアブノーマルな趣味は持たない、Hが凄く上手で言葉責めも得意な野性的な男。あたしに一途で溺愛して甘やかす天才で、嫉妬深くヤンデレ傾向もあるが、笑うと可愛い。容貌は気高いオリエンタルな服が映える、高学歴と肩書きを持つ頭のいい男。無人島で生き残れそうなタイプ"

 過去の痛い恋愛経験の影が見え隠れしているとも思える……それらを基本形に、応用として学生時代にやりこんだ、二次元の乙女ゲームの世界観をスパイス。

 ハーレクインさながらの世紀の大恋愛とばかりに、障害だらけの攻略相手と結ばれた時には、感動して涙した……今では絶対ありえないだろこれと純粋に思える、主人公総受け&RPGファンタジー(ただし、巷ではクソゲーと呼ばれた18禁)の世界観も交えてみたり。

 ねじくれた妄想世界の完成だ。


 いいのさ、ありえない条件を書きたいからこそ人ごとで。

 あたしなら絶対お断りだ。いくらイケメン相手の恋を盛り上げるためとはいえ、山あり谷ありじれじれ展開になりそうな、相手が抱える面倒臭い背景は。


 だけど、そんなどんぴしゃり100%の男を見つけられねば、1億円です。
 


「はい、送信と」


 にひひと笑えば、すぐにメールが来た。

 真面目に現実的なことを書けと泣きつかれたのかと思いきや、内容は至ってシンプルで。


『英雄(ヒーロー)の条件を教えて下さい』


 こんな数秒で、内容を読んで受け入れる気かって驚くあたし。

 同時に、もと戦隊&ライダー好きでもあったオタクの血がめらめら燃える。


「あたしに聞くか、ヒーロー像を!」


 あたしの鼻息は荒い。
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