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白雪姫にくちづけを
第29章 彼女の涙腺
=「ひろみくんに会えなくなるの、寂しいよ」=
「なかないでよ、あずちゃん。」
(!?)
開けた視界。
目の前には、小さな男の子が立っていた。
彼は あずさに手を伸ばして、よしよしと頭を撫でている。
(あれ?この男の子は…?)
見覚えのある面影。
ふと、あずさは自分が泣いていることに気がついた。
(涙?!
あ………あぁ…そっか、、、
これは、あたしの記憶…………?)
あずさは理解した。
ここは、自分の記憶の中。
目の前にいるのは、幼い日の浩巳だ。
2人は夕暮れ時の、あの公園に立っている。
(そっか…今日は、引越しのお別れを言いに来た日だ…)
そんなことを思い出しながら、あずさは幼い浩巳に言った。
「…本当に?」
彼は答える。
「ほんとうだよ!
おとなになったら、___するから。
そうしたら、ずっと いっしょだよ!
さみしくないね!」
「……うん、寂しくないね。」
「じゃあ、やくそく!」
(あれ?何を約束したんだっけ?)
あずさが約束の記憶を思い出そうとした時、照らしていた夕日が、一層強く輝き出した。
幼い浩巳の姿が光にまみれ、見えなくなってゆく。
『……さ!………さ!』
(待って、あたし大切なこと忘れてる!どんな約束したの?!)
『……ずさ!』
目の前が光に満ちる───
(待って!まだあたし、思い出してな────)