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白雪姫にくちづけを
第29章 彼女の涙腺
『あずさっ!』
目を開けると、梨々子の顔が視界に飛び込んだ。
『あずさ!良かった!』
『あれ…りっちゃん…?』
『あずさちゃん大丈夫?ここ、医務室だよ。』
芽衣の言葉を受け、周りを見渡すと、あずさは自分がベッドに横になっていることに気づいた。
『……あたし、何で…?』
『携帯で話してたと思ったら急に倒れちゃったんだよ。何かあった?』
(ハッ!そうだ!)
『浩巳っ!!』
咄嗟に起き上がったあずさは眩暈に頭を抱える。
『無理しちゃダメだよ、今、保険医さん呼んでくるから…』
『違うの!大変なの!浩巳が意識不明で病院に運ばれたの!』
あずさは2人の制止を振り切って、立ち上がる。
『浩巳くんが…?!』
『詳しくは分からないけど…とにかく、あたし病院に行く‼︎』
『あずさ、動いて大丈夫なの?!今倒れたばっかりだよ?!』
『心配かけてごめんね!でも、どうしても行きたいの!ごめんね!』
あずさは大学を出、タクシーを拾い病院へ向かう。
血だらけ───
おばさんの言葉が頭から離れない。
(お願い!お願い!無事でいて、浩巳!!)