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白雪姫にくちづけを
第30章 彼の存在
キイィィィィン…
──=「ケッコンしようよ!」=──
(あぁ…そう、そうだ…
ちゃんと思い出した…
あの日の約束…!)
あずさはゆっくりと口を開く。
『…「あたしより弱い人とは、結婚しないよ。」』
彼はやわらかく答える。
『くす…それはもう、クリアできたかな?』
『…「大人にならなきゃ、結婚できないんだよ。」』
『じゃあ、あと少し…待っててくれる?』
鼻が触れ合いそうな距離で目を合わせ、あずさは小さくうなづいた。
彼女の涙は、いつしか笑顔に変わる。
『寂しくさせないから…』
チュ…チュプ…
『ん…ふ//』
(浩巳が側にいてくれたら…寂しくない。浩巳がいない日々なんて、もう想像できないよ…)
『ずっと、ずっと、側にいてね…』
(いつか、なりたい。浩巳のお嫁さんに…)
やさしく照らす夕日に包まれて、
2人は誓うように くちづけを交わす。
愛しい想いを織り込んで…
もう二度と離れてしまわぬよう願いを込めて…
彼女の涙。彼の存在。
互いの心を大きく揺さぶるそれらは、大切な想いの証。
いつか仕舞いこまれた幼い日の記憶は、彼らの中に再び色鮮やかに宿ったのだった。