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白雪姫にくちづけを
第30章 彼の存在
『やっと…思い出せた…!』
彼の呟きは、あずさには届かない。
『浩巳…良かった…良かったよぉ…』
『あぁ…あずさ、ありがとう。
心配かけて、ごめんな…』
点滴のない片方の腕で、あずさを胸に抱く。
浩巳はそのまま、やさしく彼女の頭を撫でて、こう言った。
『あずさ…
「ケッコンしようよ。」』
『ぐす…え、な何?』
『約束…したでしょ?』
ふっと目を細める浩巳。
キョトンとするあずさのおでこに頭を合わせ、そっと彼女の小指を自分のそれと絡ませる。
『…思い出したんだ。
おれ、泣いてるあずさ見るの、これで2回目だよ。
その涙を止めるのは、やっぱりおれの役目であってほしい…』
やさしく頭を撫でる、彼の手。
繋がれた、小指。
窓から差し込む夕日に照らされ…
あずさの記憶もまた、次第に彼女の奥底から蘇る。