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あたかも普通の恋愛小説
第4章 恋花・火花


井藤くんはフッと笑って挑戦的な笑顔を作る。


「いいね、俄然燃えてきた」


壁に寄りかかって逃げ場のない私。逃がす気なんてさらさらない彼。無駄な抵抗なんてしたら余計に嫌な想いをするだけ。心に傷が残るだけ。いつものように諦めて受け入れて、そしたらきっと楽に――


(まただ。また私楽な道を選ぼうとしてる)


梨花子が叱ってくれた。真壁さんに助けてもらった。なのに私はぜんぜん変われていない。


「あの……、私、」


勇気を出して変わらなきゃ駄目。


「実は好きなひとがいるんです。だからもう、こういうのイヤなんです」


拒む勇気。自分のために戦う勇気。

私がなけなしの勇気を絞り出したのに、井藤くんは鼻で軽く笑った。


「あぁごめん、……悪気はないんだけどさぁ」


笑顔が怖い。目が笑ってない。もしかしたら怒ってる。


「それってさぁ――真壁のことだったりする?」


「え?」


何で井藤くんの口から真壁さんの名前が出るの?私、真壁さんを好きなこと、まだ誰にも話してない。え?


「ど…して……」

「俺にしておきなよ、小鳥ちゃん。幸せにしてあげるからさ。他の男なんかすぐ忘れさせてやるよ」


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