この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
あたかも普通の恋愛小説
第4章 恋花・火花
井藤くんはフッと笑って挑戦的な笑顔を作る。
「いいね、俄然燃えてきた」
壁に寄りかかって逃げ場のない私。逃がす気なんてさらさらない彼。無駄な抵抗なんてしたら余計に嫌な想いをするだけ。心に傷が残るだけ。いつものように諦めて受け入れて、そしたらきっと楽に――
(まただ。また私楽な道を選ぼうとしてる)
梨花子が叱ってくれた。真壁さんに助けてもらった。なのに私はぜんぜん変われていない。
「あの……、私、」
勇気を出して変わらなきゃ駄目。
「実は好きなひとがいるんです。だからもう、こういうのイヤなんです」
拒む勇気。自分のために戦う勇気。
私がなけなしの勇気を絞り出したのに、井藤くんは鼻で軽く笑った。
「あぁごめん、……悪気はないんだけどさぁ」
笑顔が怖い。目が笑ってない。もしかしたら怒ってる。
「それってさぁ――真壁のことだったりする?」
「え?」
何で井藤くんの口から真壁さんの名前が出るの?私、真壁さんを好きなこと、まだ誰にも話してない。え?
「ど…して……」
「俺にしておきなよ、小鳥ちゃん。幸せにしてあげるからさ。他の男なんかすぐ忘れさせてやるよ」