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あたかも普通の恋愛小説
第4章 恋花・火花
結局私は強く拒否の姿勢を貫くことも出来ずに、井藤篤司に手を引かれホテルの一室に到着してしまった。帰りたい。
「すごく浮かない顔してる。俺みたいのはタイプじゃない?」
クスクスと笑う井藤くんに、私は何て返していいかわからない。
「……別に、そういうわけじゃ」
言い終わらないうちに唇を塞がれて壁際に押し付けられる。
「あの女が言ってたこと気にしてる?可愛いね、小鳥ちゃん」
“来るもの拒まずの誰とでもヤれちゃう軽い女なんですよねー?この間自分でそう言ってたじゃない――”
姫紗のけたたましい猫なで声が頭の中に蘇る。
器用な指先がポロポロとボタンをはずしていた。慌てて胸元を腕で隠した私に、井藤くんは囁く。
「俺さ、自慢じゃないけど今までいっぱい女の子抱いてきた。だから思うんだ。別に小鳥ちゃんはやな女じゃないよ」
何を言いたいのかわからなくて息を飲んでいると、髪を耳にかけられ、耳たぶのピアスに触れられた。くすぐったさが次第に緊張を高めていく。
「もしちょっとでも後悔してて、自分を変えたいって思ってるんなら。俺を試してみてよ。他の男と違うかもしれないよ」
「ちが…違わない、どうせ皆、自分だけ楽しんで、すぐに捨てるもの。貴方だって、ただ遊びたいだけでしょ」
真っ向から誰かを批判してしまうなんて声が震えた。小学生じゃあるまいし、って悪態をついた先輩が浮かぶ。肉食男子なんて皆そうでしょ。だから私ってば幸せになれないのよ。