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あたかも普通の恋愛小説
第4章 恋花・火花


どうして井藤くんにされると挿入れてもいないうちからこんなに濡れてきちゃうんだろ。


(あ、れ……?そういえば)


一晩一緒に過ごしたのに、まだ挿入れてない。私ばっかり感じてて、井藤くんには何もしてない。


「ね、井藤く――」


そのとき、井藤くんのものと思われるスマホが音をたてた。私の額に軽くキスをしてからスマホに手を伸ばした彼。どうやら電話みたい。


「――俺。

あー……そか、悪い……いや。うん、忘れてた。……マジで?……うん、……うん。わかった」


何か予定があったのかも。私は話を最後まで聞かないで一人シャワー室へ足を向けた。熱いシャワーを頭から浴びて体のほてりも洗い流してしまえるかな。結局井藤くんと真壁さんの繋がりも聞いてないし、何やってるんだろう私。


シャワーを浴びていたら、コンコンとノックの音。服を着た井藤くんが扉の向こうに立っていた。

蛇口を閉めてシャワーを止めると水のポタポタ落ちる音さえ聞こえる。


「ごめんね小鳥ちゃん。呼ばれたから大学行ってくる。また連絡するから……会ってくれる?」


私が扉を開くとはにかんだ顔の井藤くんがいた。


「貴方はまた会ってくれるの?いつもまたねっていってそれきりのひとばかりよ」


水の滴は私の体を伝ってポタポタ落ち続ける。

少し驚いた顔をしてから井藤くんはくすりと笑って、濡れるのもかまわず私を引き寄せると強引にキスした。


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