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秘密
第9章 露見
奈美子は仕方なさそうに受話器を置いた。


「慎一郎さんにも悪い所があったからって…、何だか逆に謝られちゃったわ。
大丈夫かしら咲子さん。相当参ってるみたいだったけど…、ゆっくり話ができなかった」


秘密は守られた。


母はもう西村家にしつこく問いただそうとはしない筈だ



沙織は息苦しさを感じながらもほっとしていた。


母は、娘の不貞と離婚に肩を落とし、西村と世間に後ろめたさを感じるだろう

それでも

一生傷が残るような後悔をさせるよりはましだ

私の為に生きてきた気丈な母が、正気を失う姿は見たくない

誰が理解できるだろう

あの母と息子が、娘のすぐ傍で禁断の性を貪り合っていたなんて


奈美子は沙織の前に静かに腰掛け、沙織の手を両手で握った。

娘の目を見つめる奈美子の顔が、何かを訴えるかのように切なく変わっていった。


「なんて事を…、沙織、あなたは、なんて事をしてくれたの…沙織、沙織、沙織っ……うゥッ…」


娘の手を強く握り、何度もテーブルに押し付ける。

何事にも動じないと思っていた母が、ついに耐え兼ねたようにむせび泣く姿が、沙織の沈黙への覚悟を更に強めた。


「ごめんなさい。
お母さん、ごめんなさい、ごめんなさい…うぅっ…ごめんなさい…」



がっかりさせて


嘘をついて…


お母さん




許してください







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