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大地の恋
第1章 幼馴染みの弊害
電車を降りると地元の駅に到着する。
この駅に降り立つのは何年ぶりになるだろう。



懐かしい町並みを眺め、大きな荷物を抱え実家への道のりを歩む。


時期外れの異例の辞令で急遽本社へ移動になった。


俺は29歳になっていた。




この町は変わらない。
まるであの頃に戻ったかのような錯覚を覚えそうになる。



この道をよく手を繋いで歩いたよなとか、ここでキスしたよな…なんて未練がましい懐かしさに浸りながら実家へ戻るとそこに居たのは…



「あら大地おかえり」


「ただいま」



実家の前で立ち話する母親と…


「大ちゃん!?やだ久しぶりね~」


「ご無沙汰してます」


真優のおばさん。


そしてその足元には……


「……もしかして真優の子ですか?」



まだ小さな男の子。



「真優ちゃん二人目が生まれたんだって」


「へー…おめでとうございます。真優、今帰ってるんですか?」


「一昨日生まれたばっかりだからまだ病院なのよ」


「あの真優が二人の母親か…」


感慨深いとはまた違う名も無き気持ちが込み上げる。


おばさんに張り付くその子にしゃがんで目線を合わせてみると、俺を警戒しておばさんの足に顔を埋める。


「ホラゆづ、お兄ちゃんにご挨拶は?」


「………」


「こんにちは」


「…………」



片目だけで俺を伺うその顔は記憶の奥のあの副担任そのもので……


「知らない人だから恥ずかしいか?」


営業スマイルで笑ってみるもそいつはなびく様子もなく…


「もう…ごめんね大ちゃん。誰に似たのか愛想がないのよー」


父親に似たんだろ?そっくりじゃねーか!


…と心で悪態つきながら表面で笑う悲しき営業マンの性。


「しょうがないよな、初めて会ったんだもんな…」


ポンと頭に手を置くと、今度は眉間にシワを寄せてあからさまに嫌な顔をする。


「………」


クソガキめ。


「あ、ゆづそろそろ帰りましょう。おじいちゃんが帰ってくるわよ」


おばさんがそいつの手を引いてお袋と俺に挨拶する。


「またね、ゆづくん」


お袋は真優の子をよく知っているのだろうか。
親しみのある声で手を振り二人を見送りながら俺にポツリとこぼした。
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