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大地の恋
第5章 幸せの形
「鼻の下伸ばして奥さんの尻に引かれながら嬉しそうにやってるよ」


「その言い方…でも良かった」


何だかんだ優しい大地は良い旦那さんになってるに違いない。
そしてこの子の良いパパなのだろう。


「……ね、おばさん。大地の奥さんてどんな人?」


「あらー?気になる?」


「ふふっ、幼馴染みだからね」


私の言葉におばさんは目を細め、赤ちゃんをあやしながら教えてくれる。



「サッパリして明るくていい子よ」


赤ちゃんはおばさんのあやしに声を出して笑った。



「そうそう、お嫁さんが言うの。大地がね、“この子は女子校にだけは絶対入れない”って言うんだって」


「………」


「“よっぽど痛かったんですね”って笑いながらね。……そういう子かな」



何故だろう。泣きそうになった。
そのエピソードで大地の奥さんがどんな人なのか分かった気がした。



「……いい人見つけたね」


「あら、真優ちゃんが言っちゃう?」


「言っちゃうよ。…いつか私も会えるかな」


「とりあえず町内の運動会なんかに参加してみれば会えるかもよ?今ならリレーの枠が…」


「リレー…絶対嫌だよ」



それから早く行こうと桃が私を引っ張るから、赤ちゃんをおばさんに返してそこで別れる。



公園の前を通る時、無性にあの頃が思い出され懐かしさに胸が詰まった。


あの頃、私は私なりに精一杯大地の事が好きだった。
大地だってそれはきっと同じ気持ちで…


細い糸が寄り添い絡まり、もつれ離れる。





そして私は先生と。



大地は奥さんと…




それでもあの時間が私の中で輝き続けるのも確かだった。



「…黒歴史でもあるんだけど」


クスリと笑うと桃が不思議そうに私を見る。


懐かしいと思えるくらい大地との出来事は消化された思い出に変わっているみたいだ。


「さて、お兄ちゃんが幼稚園から帰る前に帰らなくちゃね」



さっきの歌の続きを桃と歌いながら慣れ親しんだ道を歩く。


いつか…また大地と会える日が来るだろうか。
友達として、幼馴染みとして…
今度会ったときにはもっと屈託なく話せる気がする。




そして今夜は先生と、あの頃の話をしてみようと思っていた。

















大地の恋










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