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Deep Emotion
第3章 弟



「できましたよ」

夕食の支度を終え、私はリビングでくつろいでいた門倉さんと陽くんを食卓に呼んだ。今夜はパスタとサラダだ。

「あれ、2人分だけ?」

陽くんがテーブルの上の皿を見て言った。

門倉さんと陽くんの分だけでいいと思ったんだけど、誰かお客様でも来るのだろうか。

「澪は一緒に食べないんだ?」

「え」

ハウスキーパーが一緒に食事とか聞いたことないんですけど。

「私は後でいただきます」

「あ、また敬語」

しまった。陽くんには普通に喋っていいって言われてたんだっけ。

「罰として、澪は一緒にご飯食べてよ」

「ええっ?」

そもそも、それって罰なの?

「いいんじゃないかな。後からひとりで食べるなんて味気ないだろうし。一緒に食べよう」

門倉さんまでそうやって勧めてくるので、私は自分用にパスタを皿に盛って食卓に着いた。

「それにしても藤澤さんと陽は会ったばかりなのに仲がいいね。同い年だからかな」

パスタをくるくると巻きながら門倉さんが話を振った。

「かもね。兄貴は7コも上だもんな」

「えっ、門倉社長って今27歳ってことですか?」

「先週誕生日来たから、今28だよ。俺、4月生まれなんだ」

家でくつろいでいるせいか、門倉さんは自分のことを「私」ではなく、「俺」と言っていた。

「それより、会社じゃないんだし、社長はやめてよ」

門倉さんが照れ笑う。

「あ、…すみませんつい…。…門倉さん」

なんだか、こんな風に誰かと喋りながら食べるご飯なんて久し振り。

私は幸せな心地を感じていた。
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