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Deep Emotion
第3章 弟
*
「できましたよ」
夕食の支度を終え、私はリビングでくつろいでいた門倉さんと陽くんを食卓に呼んだ。今夜はパスタとサラダだ。
「あれ、2人分だけ?」
陽くんがテーブルの上の皿を見て言った。
門倉さんと陽くんの分だけでいいと思ったんだけど、誰かお客様でも来るのだろうか。
「澪は一緒に食べないんだ?」
「え」
ハウスキーパーが一緒に食事とか聞いたことないんですけど。
「私は後でいただきます」
「あ、また敬語」
しまった。陽くんには普通に喋っていいって言われてたんだっけ。
「罰として、澪は一緒にご飯食べてよ」
「ええっ?」
そもそも、それって罰なの?
「いいんじゃないかな。後からひとりで食べるなんて味気ないだろうし。一緒に食べよう」
門倉さんまでそうやって勧めてくるので、私は自分用にパスタを皿に盛って食卓に着いた。
「それにしても藤澤さんと陽は会ったばかりなのに仲がいいね。同い年だからかな」
パスタをくるくると巻きながら門倉さんが話を振った。
「かもね。兄貴は7コも上だもんな」
「えっ、門倉社長って今27歳ってことですか?」
「先週誕生日来たから、今28だよ。俺、4月生まれなんだ」
家でくつろいでいるせいか、門倉さんは自分のことを「私」ではなく、「俺」と言っていた。
「それより、会社じゃないんだし、社長はやめてよ」
門倉さんが照れ笑う。
「あ、…すみませんつい…。…門倉さん」
なんだか、こんな風に誰かと喋りながら食べるご飯なんて久し振り。
私は幸せな心地を感じていた。