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Deep Emotion
第8章 春の夜道
「声、掛けてくれてよかったのに」

「デート中みたいだったから、声かけたらお邪魔かなって思ったの」

「ふーん。気を遣ってくれたんだ」

陽くんは抑揚のない淡々とした口調で言う。なんだか少し機嫌が悪そうにも見える。

「彼女がいるんだから、もうからかうのやめてね」

「…からかう?」

ピタリ、と陽くんが歩きを止めた。

「からかうって、何のこと」

わかってるくせに。

「だから、こないだの…、その…」

恥ずかしくて、ごにょごにょと口ごもると、陽くんが唇を重ねてきた。

「…んっ…」

唇の隙間から舌を割り入れられ、わたしのそれと絡み合う。

「…ん、…ふっ…」

街灯の少ない夜道で、人通りだってないようなものだけど、誰かに見られたら、どうすればいいの。

それに、陽くんには彼女がいるんだから、こんなことしたら、…だめだ。

私は思いっきり力を込めて、陽くんを突き飛ばした。
「…っ」

唇が離れ、陽くんがよろめく。

「やめてよ…!」

私はその場を離れようと、陽くんに背を向けると、手首を掴まれた。外壁に体を押し付けられる。
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