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Deep Emotion
第9章 偽物の婚約者
「母さん、あんまり困らせないでよ」
門倉さんが間に入り、由里さんを窘めた。
優しい声なのに、その目はきつく由里さんを睨んでいた。
「……ふーん?」
由里さんはにっこり笑うと、私の両手をぎゅっと握った。
「澪ちゃん」
「えっ?」
今、澪ちゃんって言った?なんで?
「ごめんなさいね、明が婚約者の振りなんかさせて」
「え!?」
ば、バレた…!
「…やっぱり婚約者なんて嘘だったのね」
ふう、と由里さんが色っぽくため息をつく。
「わかっていたんだね」
門倉さんが表情を緩めた。
「ん、何となく。それにしてもバカね。お見合いくらいでよそ様のお嬢さん巻き込んで。大体お見合いだって貴方が恋人も好きな人もいなさそうだからこっちがお膳立てしようと思ったんじゃないの」
「ご、ごめん」
門倉さんが謝ると、由里さんは紅茶を一口啜った。
「…でも、貴方が澪ちゃんのこと好きなのはよくわかったわ。澪ちゃんはどうなのか知らないけど、ね」
由里さんはにこにこと笑って席を立った。
「澪ちゃんに免じて先方には私から断っておくわ」
ひらひらと手を振りながら颯爽とした足取りで、由里さんはカフェを出た。
ひとまず当初の目的であるお見合い回避は成功したようだ。
「…藤澤さん、ありがとう」
門倉さんが席を立ち、私の向かいに座り直して言った。
私はただ、頷いた。緊張が解けたばかりで、まだ動く気にもならなかった。
門倉さんが間に入り、由里さんを窘めた。
優しい声なのに、その目はきつく由里さんを睨んでいた。
「……ふーん?」
由里さんはにっこり笑うと、私の両手をぎゅっと握った。
「澪ちゃん」
「えっ?」
今、澪ちゃんって言った?なんで?
「ごめんなさいね、明が婚約者の振りなんかさせて」
「え!?」
ば、バレた…!
「…やっぱり婚約者なんて嘘だったのね」
ふう、と由里さんが色っぽくため息をつく。
「わかっていたんだね」
門倉さんが表情を緩めた。
「ん、何となく。それにしてもバカね。お見合いくらいでよそ様のお嬢さん巻き込んで。大体お見合いだって貴方が恋人も好きな人もいなさそうだからこっちがお膳立てしようと思ったんじゃないの」
「ご、ごめん」
門倉さんが謝ると、由里さんは紅茶を一口啜った。
「…でも、貴方が澪ちゃんのこと好きなのはよくわかったわ。澪ちゃんはどうなのか知らないけど、ね」
由里さんはにこにこと笑って席を立った。
「澪ちゃんに免じて先方には私から断っておくわ」
ひらひらと手を振りながら颯爽とした足取りで、由里さんはカフェを出た。
ひとまず当初の目的であるお見合い回避は成功したようだ。
「…藤澤さん、ありがとう」
門倉さんが席を立ち、私の向かいに座り直して言った。
私はただ、頷いた。緊張が解けたばかりで、まだ動く気にもならなかった。