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隠匿の令嬢
第4章 巣を追われた灰ネズミ



 素直に憧れた。


 アリエッタはこれまで後悔ばかりで、人に誇れるものがなかったから。


 アリエッタを惹き付けてやまないレオの鮮烈なまでの色彩は、彼のそんな自信からきているのだろうか。


「温室の花はともかく、アリエッタ。俺はあなたの描いた俺を見てみたい。だからせてめ肖像画が完成するまでは俺のところに来い」


 こんな自分でも──自分の描いた絵でも彼は求めている。


 これは赦されないことだと解ってる。


 罪に穢れた自分がこれ以上罪を重ねれば、取るに足らないこの命をもってしても償いきれない。


 だけれどもしその時が来ても、彼のように後悔はないと言いきりたい。




 アリエッタは奥深くに灯った熱を掬い上げ、一度キュッと唇を結び、そして──。


「はい….…はい。どうかその時までお傍にいさせてください」


 レオはふっと口許を綻ばせ、アリエッタを再び引き寄せ口づけした。


「……やはり学習能力が足りてないな」


「そうね……」


 呟いたアリエッタの瞳の奥。


 哀しみはそっと身を潜ませた。





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