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隠匿の令嬢
第2章 温室での密会
アリエッタは入学をしてまだ三ヶ月足らず。広い敷地をまだ全て見て回れていない。
どこへ向かうでもなく、気の向くまま足の向くまま敷石を詰められた歩道を歩いていれば、遠くの木々の隙間からドーム型の煌めく建物がアリエッタの双眸に映る。
(あれはなにかしら?)
重たい気分をそこに置き、初めて見る建物へ軽やかな足取りで進む。
校舎から随分離れているから人の気配はなく、余計に胸を高鳴らせる。
近くまで行くと、そこはモスグリーンの枠に縁取られたガラス張りの温室であった。
木々で羽根を休める小鳥の囀り、風に揺れて葉の擦れる音が大きな温室を包み、その素晴らしさにアリエッタは息を呑んだ。
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