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隠匿の令嬢
第2章 温室での密会
ガラス越しにアリエッタは中を覗いてみる。
季節でないのに花弁を開かせる花、図鑑でしか見たことがない花、背の高い観葉植物……アリエッタはガラス越しでは物足りなくなる。実際触れて、香る花の匂いを嗅いで溢れてくる感情を余すことなくキャンバスに描きたい。
(中に入ってもいいのかしら?)
遠目で見た限りとてもよく手入れされている花々は、誰かが常に管理していなければなせないだろう。
勝手に入っていいものか……。入口の扉には施錠が可能のようで鍵穴があり、鍵が開いてなければ講義を受けている教授にでも尋ねてみて日を改めようと思い、そっと金色の繊細な彫り物をしてあるドアノブを捻ってみた。
するとドアは呆気ないほど簡単に開く。
アリエッタは一度辺りを見渡し、許可を取るべき人物がいないか確認し、やはり誰の姿もなく少し緊張を覚えながらドアの隙間から身体を滑り込ませた。
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