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隠匿の令嬢
第7章 危険な一夜
ルードリアン男爵の別邸は首都メフィスから馬車で2日走った湖畔近くにある。
別邸、ということにはなっているが、実のところはこちらが本邸だ。本邸はルードリアン男爵が治める領地にあり、多くの貴族は首都近くに別邸を建て、政治や副職とも言える仕事の基盤は別邸にあり、そちらに住んでいるから認識としては別邸が本邸に掏り変わるのだ。
アリエッタはレオと、そして常にレオに付き従うジョシュアと二人の世話係としてナキラを伴い、ルードリアン男爵邸へと旅立った。
道中、レオと交流のある老齢の紳士の邸宅で一泊し、ルードリアン男爵邸へ着いた頃には宵闇が迫っていた。
茜色に染まる空はすでに夜の支配下に置かれつつあり、薄く主張する月は今宵も瞬く星を引き連れ宴を開くことであろう。
アリエッタは辿り着くまで一度も退屈することはなかった。
馬車のカーテンを開ければ見たことのない景色がアリエッタを高揚させ、子供のように純真な輝く瞳で何時間も眺めて。向かいに座るレオに呆れられたほどだった。
そのレオも珍しく剣を携えていた。剣を脇に置くレオはいつも以上に凛々しく、精悍に見えた。
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