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隠匿の令嬢
第8章 忍び寄る影
──翌朝。アリエッタはレオとの一夜を覚えていなかった。
ニーナに注がれたワインを3口呑んだ辺りから記憶が抜け落ちている──抜け落ちていることさえ気に留める余裕はなかった。
朝目覚めると、酷く頭が重く痛い。誰かが耳の側でガンガンと激しく鐘を打ち鳴らしている。そんな感覚に苛まれて。
ナキラが運んでくれた朝食も殆ど手をつけられなかった。
「ごめんなさい。お昼にまたいただくから」
「いいえー。滞在最終日に災難ですねぇ」
「ええ……。ニーナと近くの街へ行く約束していたんだけど……これでは行っても迷惑かけそうだわ」
青白い顔でこめかみを押さえるアリエッタ。気分は悪くはないが、頭痛でくらくらと目眩がしてしまう。
「ニーナ様もまだお休みになられてるそうですよ。アリエッタ様より随分とお酒をお召し上がりになったそうですから」
「そうなの? 大丈夫かしら……。レオやセドリック様は?」
「レオ様はお元気でしたよ。セドリック様はどうでしょうね」
ナキラは肩を竦め、苦笑い。アリエッタの知るところではないが、ニーナとセドリックは明け方まで呑み明かしていたのだ。
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