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隠匿の令嬢
第9章 息を殺して生きる理由
ラインハルト王国でも屈指の名家であるザキファス公爵家。その長女としてアリエッタは生まれた。
ラインハルトでは女であっても財産や爵位を相続できる。ただし男子優先ではあるが。
男子がいない家では、多くの者は婿をとって爵位を与えるものの、爵位は女相続人のものであることには変わりない。
ザキファス家では当時、前ザキファス公爵が存命ではあったが、いずれは父へと爵位が与えられることになっていて。
次期当主になるであろう父と母の間にアリエッタの次にリリスが生まれたが、それ以降子供に恵まれず、アリエッタが父の後継者となり、幼い頃より厳しい教育を受けてきた。
教養、マナー、政治についても学び、いずれ社交界に出てもいいようダンスのレッスンも。
アリエッタは両親の期待に応えるべく、遊びたい年頃であるにも関わらず、辛抱強くよく学んだ。
ニーナと出逢ったのもこの頃だ。父と商談をしにきたルードリアン男爵がアリエッタに眼を留め、ニーナと同じ年であることから次に訪れたときにニーナを連れてきた。
ニーナもまた兄弟がおらず、後継者として教育を受けており、似た境遇からすぐに仲良くなった。
この頃のアリエッタは厳しい父と気弱で控えめな母、そして自由闊達な妹との生活には満足していた。
窮屈に思うことはあっても、後継者に生まれたのだからそれが普通であった。
──あの事故が起こるまでは。
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