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隠匿の令嬢
第9章 息を殺して生きる理由
「お前は人に不幸しかもたらさないな」
伯爵の死を告げられた際、父に言われた言葉だ。
──ああ、そうね。私が伯爵に嫁ぐことにならなければ、伯爵はまだ死ななくてもよかったかもしれない。
私が姉でなければリリスは怪我をせず済んだ。
私が娘でなければお父さまはこんなにも苛立たなくてもよかった。お母さまはもっと笑っていられた。
リリスに怪我を負わせてから7年の月日が流れようとしていて、アリエッタにそう思わせるには十分な時間であった。
それから社交界へは出さないと言われたときも抵抗はなかった。
「お姉さまは傷も無くて、お綺麗ですものね。さぞご立派な方と結ばれて幸せになるのでしょうね。……でもそんなこと、私が絶対に赦さない」
リリスにいつか言われた言葉がアリエッタの心にと絡み付き、幸せになるべきでない。男性と関わるべきでもないと思わせていたからだ。
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