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隠匿の令嬢
第10章 真夜中の逃亡と──
皆寝静まっている邸はとても静かで、世界から独りきりで取り残されたようにも思えてくる。
アリエッタは廊下の隅で壁に手をついて、ずるずると崩れ落ちた。
レオに拒絶されてしまったことが、アリエッタを打ちのめしていたのだ。
一度は抱こうとしてくれたであろうレオ。しかしアリエッタでは欲情の対象にすらならなかった。
恋心を自覚し、破れ去ったのだと悟ったとき以上に惨めで情けなく、そして恥ずかしかった。
レオに想い人がいると知りながら、抱いてくれと懇願した。おそらくレオの眼にははしたなく、最低の女と映ったことだろう。
あわよくば既成事実をつくって、レオの恋人の座におさまろうとした女に見えたかもしれない。
そうでなくとも、女から誘うなど卑しくもあり、浅ましい行為だ。
拒絶だけでなく、レオに見捨てられてしまった。
素性の解らないアリエッタに親切にしてくれて、家族とまで呼んでくれたレオから発せられた言葉は壮絶な威力を伴うショックを与えた。
『出ていけ』の言葉を額面通り受け取ったアリエッタは、力無く立ち上がるとそのままの足で邸を出た。
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