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隠匿の令嬢
第10章 真夜中の逃亡と──


 言われてみればそうかもしれない。知らないからこそ恐い。


 おそるおそる屹立に指を這わせるとレオが短く息を吐くのが聴こえた。


 もしかしてレオも気持ちいいのだろうか? 愛する人がアリエッタの指で感じてくれているのが嬉しくて、恐々ながらも裏筋を撫で上げた。


 すると不思議な感覚がする。どこかでこれを見た覚えが──。


 アリエッタは酒に酔い覚えてはいないが、一度目の当たりにしているのだ。


 そうとは知らないアリエッタは感覚のままに首を傾げると、レオが含み笑いをしていた。



「あまり焦らしてくれるな」


「あっ、ごめんなさい……」


 咎められたのかと思い、瞬時に手を引っ込めると、また寝台へと組み敷かれる。


 そして脚を広げられ、ぴたりと蜜口に剛直の先端が添えられた。



「アリエッタ。キミの純潔は俺がもらう。──いいな?」


 僅かに細められたレオの双眸。オイルランプの光が揺めき、瞳が揺れる。


 きっとアリエッタの双眸も揺れているのだろう。心と同じで。


 後戻りは出来ない。だが今なら──。


 迷いを打ち消すかのよう、アリエッタはレオの頬に手を伸ばし、僅かな笑みを浮かべた。


「はい……はい。どうか最後まで……」


 今宵だけ。罪を忘れてさせて欲しかった。


 レオの手で、愛する人のすべてで。








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