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隠匿の令嬢
第10章 真夜中の逃亡と──



 翌朝。夢現つにいたアリエッタは、とても心地好い温もりに包まれ、なかなか目覚められなかった。


 その温もりはどんな上質なリネンよりも肌触りがよく。柔らかさはないのに頬擦りしたくなる。実際に擦り寄ると安心し、また眠気を誘う。



 寝台にこんな肌触りなどあっただろうかと疑問がもたげ、まだ眠い眼を擦り開ける。


 すると人の肌のような材質のものが視界に入る。眠気眼で視線を下から上へと流せば、長い睫毛を見せて眠るレオがいて。


 ああ、まだ夢を見てるんだわ。と瞼を伏せかけ、はたと止まる。



 夢で温度や感触を感じるだろうか? のろのろと目の前の肌に手を添わせてみる。トクン、トクンと規則的な脈動が指先を打つ。


 僅かな振動であるのに、金属で叩かれたかのよう、一気に目覚める。


(そうだわ、私夕べ……!)


 目覚めとともに記憶も甦る。そして戸惑う。


 こうしてレオと一緒に朝を迎えたのも初めてであるし、昨夜身体を繋げたこともそうだ。



 今更慌てふためいてもどうにもならないが、昨夜の自分は自我を失っていたことまで思い出し、動揺してしまう。




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