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隠匿の令嬢
第10章 真夜中の逃亡と──
眠りの狭間にいたときの安心はどこへやら。レオの横にいることも、昨夜の情事も、彼から感じる体温も安心させる要素がひとつもない。
アリエッタは混乱しながらも、とにかくレオを起こさないようにそっとベッドから抜け出そうとする。
だが強い力で引き戻される。背中をギュッと抱き締められ、頬が温かいものに押し付けられた。
「……どこへ行く? まだここにいろ」
寝惚けた顔のレオが掠れる声で呟く。
途端、心臓が早鐘を打った。頭も混乱をきわめてる。しかしついて出た言葉で動揺を取り繕う。
「私……モーニングティーの準備を……」
「モーニングティー……?」
「え、えぇ」
混乱している割りに、我ながら逃げ出すには上手い口実だ。
もう邸から勝手に飛び出して逃げるという考えはない。またレオや他の者たちに迷惑がかかってしまうから。
けれどレオの傍にいるのは落ち着かない。
一先ず離れ、どうにか気分を鎮めたかった。
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