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隠匿の令嬢
第12章 檻の邸


「これはこれは、レオナルド殿下。ご挨拶が遅れて申し訳ありません」


 人の良さそうな笑みを浮かべる父・ザキファス公爵は、レオに握手を求める。しかしその瞳は鋭く、油断ならない。


「いえ。公爵のご活躍は常々耳にしております」


「それを言うなら殿下のほうもお若いのに、大変な功績を残されたそうで。デュアス公爵の件での殿下の対応には本当に感動致しました」


 レオと父が会話をしている最中、アリエッタは指先が冷え、感覚が無くなってきていた。


 音楽や歓談の声すらフィルターが耳に貼り付き、聴こえなくなる。


 だのに笑顔の父とリリスから発せられる剣呑とした空気だけは嫌というほど感じられ。


 スカートに隠される白い脚はガタガタと震える。




 ──覚悟はしてきた。どんな罰が下ろうと、甘んじて受ける。たとえレオと二度と逢えなくなろうとも、レオと過ごした時間はなにひとつ後悔したくない。


 その覚悟を示すよう、夜会に出席したくない理由として、父やリリスに逢ってしまう危惧を一度も思い浮かべなかった。




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