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隠匿の令嬢
第2章 温室での密会
レオの指がアリエッタの前髪を梳く。隠れていた漆黒の双眸が姿を現し、アリエッタは驚いてレオの胸を押し、囚われていた腕から退いた。
レオは頤〈オトガイ〉を上げ、高慢さを滲ませてアリエッタを見下ろす。
「この先、たとえあなたが神へその身を捧げるとしても、今のあなたはまだ独身でしょう? なんの問題もありません。それに、長い前髪や貧しい格好で誤魔化しても、その美しさは隠しようがありませんよ?」
「う、美しくなど……! 私は醜く……罪深い女です」
アリエッタは自分の言った言葉に胸を抉られる。
そうだ、そうなのだ。生涯をかけ償っても償いきれない罪が己にはある。この自由も仮初めの自由──最後の慈悲。
アリエッタは足元に落ちるスケッチブックを拾い上げ、汚れを落とすのもそこそこに無言で鍵をレオへと押し付けると、その足で逃げるよう温室から出た。
──アリエッタを追いかけてくる気配はなかった。
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